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学術情報流通に関する連続セミナー 第5回(2024年10月11日)

更新日:2024年10月24日更新

「オープンアクセスと日本の学会誌の展開」の開催について(ご案内)

 時下、益々ご清祥のこととお慶び申し上げます。
 さて、RUC(研究大学コンソーシアム)に設置されております「学術情報流通の在り方に関する連絡会」では、オープンアクセスを巡る諸問題についての連続セミナーを開催しております。このほど第5回「オープンアクセスと日本の学会誌の展開」を下記のとおり実施することになりましたので、ご案内いたします。
 今回のセミナーでは、長く学会誌の出版に携わられている永井裕子氏(特定非営利活動法人 UniBio Press 代表)に、歴史的経緯を踏まえての日本の学会誌の今、そして、今後について伺います。このテーマにご関心のある皆様の参加をお待ちしております。


1.セミナー演題:
 「オープンアクセスと日本の学会誌の展開」

2.開催日時:令和6年10月11日(金)13:30-15:00

3.開催方法:ハイブリッド(対面+Zoom 配信)

4.開催会場(対面):

ビジョンセンター東京駅前 703 号室
https://www.visioncenter.jp/tokyo/ekimae/access/
※JR「東京駅」八重洲中央口・北口から徒歩1分、八重洲地下街直結、東京メトロ「日本橋駅」から徒歩5分。

5.講師:永井裕子氏(特定非営利活動法人 UniBio Press 代表)

6.プログラム:
  1 趣旨説明
  2 講演
  3 質疑応答

7.アフターセッション(茶話会):

プログラム終了後、会場にて講師を含め参加者同士の情報交換の場を設けます(対面参加者限定・途中退席可・茶菓付き・参加者の費用負担なし)。「8」の参加申込からお申込みください。16:00終了予定。

8.参加申込:

10月8日(火)までに以下のフォームからお申込みください。後日、ご登録いただいたメールアドレス宛に参加情報をお送りします。

<申し込みは終了しました。>


講義資料

当日の動画(YouTube)


開催報告 [PDFファイル/1.3MB]


当日いただいたご質問への回答


Q1. S2Oにしろダイヤモンドにしろ、可能性を探る貴重なチャレンジだと思います。
ただ、大手海外出版社のモデルに並び立つ規模までの拡大は想像しにくいようにも思います。結局のところ各分野または地域での選択肢の多様さを目指すということになるのでしょうか。


A1. S2Oを理解されている方のご質問です。ありがとうございます。私の考えですが、「目指す」というよりは、S2Oは限定されたジャーナル群を持つ、それはAPCをもって、OA化を行うのは難しいといったパッケージもしくはたくさんの購読を受けているジャーナルになるのではないかと今は思います。選択肢の多様性を目指すものではないと思います。



Q2. APCに依存しないOAモデルは3つに分かれていますが、S2Oは図書館の購読料のみで実施されるのでしょうか。そこにクラウドファンディング、国・機関の補助金などを合わせて、OAまでの購読料を毎年集めるのは複雑でできないのでしょうか。


A2. 過日、UniBio セミナーでも似たような質問をいただきました。S2Oは購読料をそのままOA化する費用に使うのですが、実際は「寄附」と同様なものではないか?とご質問をいただいたのです。そもそも世界の多くの図書館で購入されていたパッケージなのだから、APCを使わないで、OA化を支援をしようというようになれば本当に良いのですが、難しいだろうなあというのが私の感想です。現在、国はAPCの費用はそれなりに多く出しているのではないでしょうか?ある図書館員の方に伺ったのですが、「購読費」は少なくなっているとのことで、S2Oの意味、OA化することを目指していることを国が理解し、S2Oモデルに費用をだせると素晴らしいとは思います。



Q3. S2Oの良い点として、図書館は新たな資金の用意は不要とあります。懸念点として、出版者側は極力値上げを避ける努力をすることになるとあり、表裏一体の問題だと感じました。出版社側は、どのように値上げを回避することになるのでしょうか。


A3. 値上げを回避できるかはこれからのことなのでわかりません。またこれからの学術情報世界がどうなっていくかもわかりませんね。ですので、S2Oは値上げはできないモデルであると申し上げているのではなく、出版者(この場合はBioOne)や参加をする学会は、OA世界になった時に最低限必要な装備をBioOneが持たねばならない場合が来た時にBioOneはどうするか?とうことかもしれません。お考えのように表裏一体だとも思います。お話をさせていただいた資料の中に、動物学会への返還購読料が出ていましたね、お分かりのようにBioOneが世界の中で安定したパッケージとなってからは、返還される購読料はほぼ一定なのです。円安の影響でBioOneを購読されている大学図書館購読料は上がっているかもしれませんが、BioOneが値上げを常にし続けてきたのではないと思います。そのことを踏まえてのS2Oトライアルへの決断だと考えています。現状の購読料で学会へも購読料を返還し、今の活動を維持できると踏んだとは想像できます。値上げをどうしても回避する場合は、購読料返還を減らすと思います。学会は出版論文数を減らすなどするのかもしれませんが、本当にOAそのものがどうなるかわからない今、私はわかりませんとしか、申し上げられず申し訳ありません。



Q4. よく学会誌をOAにすると学会が立ち行かないという話を聞きますが、本当なのでしょうか。学会に入るメリットは学会誌を読めること以外にあるのではないかと感じます。学会が多すぎることとも関係があるのでしょうか。


A4. その問題を抱える分野、特に研究機関に属さない、一般の方々を抱える学会には大きな問題であるようです。学会に属することはおっしゃるように意味があり、雑誌を読むだけではないだろうと思うのですが、OAになったら、会員を退会されるのではないか??と懸念されるようです。そして心配をされる学会は、一般の方々を大変大事にされておられます。その方々からの情報といったものが重要であるからだと伺っています。ですので、私は学会のそもそもの成り立ちが異なるため、難しい問題を抱える場合もあると申し上げたいと思います。



Q5. 図書館(大学)の購読料負担が大きい出版社ほど、S2Oモデルを嫌いそうなイメージがあります。大手出版社はS2Oに対してどういった反応なのか、また参加するとすれば大手出版社にとってどのような点がメリットになりそうか、誰がどう交渉していくことで実現できそうかをお伺いしたいです。


A5. S2Oを採用しようとする大手出版社はないものと思います。現状、TAを進めるほうがずっと利益が大きいからです。そもそも、S2Oは非営利出版であること、また、APCでOA化が難しいジャーナル群、そこにはSAGEがS2Oを採用した人文社会系ジャーナルも入りますが、生物系の規模の小さい、しかし基礎生物学を担うジャーナルといったところもございますが、そういったジャーナルにフィットするモデルです。また、Annual Reviewといったどの図書館も購入したいジャーナルというような場合は、出版団体が、非営利であれば、S2OでOA化を目指すこともあるかと思います。ですので、大手出版社が、S2Oを採用することはない、とは申しませんが、現状では、利益という点で、大手出版社には、S2Oは魅力がないと思います。



Q6. 研究者の方の思考として、「自信のある論文はGoldOAでオープンにしたいし、それほどでもないものはクローズのままでいい」ということがあると聞いたことがあります。すべてがOAになるよりも、選択的にOAにできる方が競争の面で都合がいいという考え方も、分野によってはありそうでしょうか?


A6. お書きくださった研究者の思考ですが、私には「たくさんの人に読んでもらうためにはOAでAPCを支払っても!しかし、そうでない場合は、クローズドで良いかなあ」と読めます。ハイブリッドモデルが多いのは、OA化への途中であるともいえますが、APCを支払えない場合も加味されているようにも思います。ですので、選択的にOAにできるほうが、ということは私にはちょっと思い浮かびません。もちろん、私の考えです。



Q7. 学会にとってTransformative Agreementが難しいというのはどういう意味からでしょうか?


A7. この回答は、日本の学術誌が商業出版社へさらに移る可能性があるのかというご質問の続きでお話をしたと思います。可能性は少ないと申し上げたのは、デジタル出版を経験して年月が経ち、それぞれの在り方で今は出版を行おうとされている学会が多いのではないか?と考えているためです。そして、商業出版社での出版の場合は、いくら学会が望んでもそれなりの地位がない場合は出版はできません。可能性があるのは、IFを持つ、実績と歴史のある分野のジャーナルでJ-STAGEで頑張られている数誌くらいかもしれません。それでもTAが進む今は、学会はAPCの金額を決める、もしくは考えねばなりません。それは簡単なことではないので、商業出版社サイトでの出版は難しいだろうと思い、回答させていただきました。



Q8. フリーアクセス(J-STAGEからダウンロードできる)ではなく、OA(DOAJの基準を満たす)であるべきかどうか、この点について、ご意見をお伺いしたいです。


A8. この問題は外部からどうしなさいと申し上げることではありません。出版を行う学会が自身のジャーナルをどうしたいかに関わるからです。フリーで結構という学会も多いように思います。ただ、それを調べたことはありません