研究大学コンソーシアム全体会議議長 山本 進一
今般の世界的な新型コロナウイルス感染症の拡大により、現在、我が国の研究活動は著しい停滞を余儀なくされています。こうした中において、アフターコロナ/ウィズコロナの
「新しい生活様式」にも合わせた「新しい研究スタイル」への移行と、日本の研究大学群における研究活動の速やかな再開と研究力の向上が喫緊の課題となっています。
これまで、研究大学強化促進事業に採択された22大学等においては、研究戦略や知財管理等を担う研究マネジメント人材(URA(ユニバーシティ・リサーチ・アドミニストレータ)を含む)群の確保・活用による研究環境改革を組み合わせた研究力強化の取組を行うことで、世界水準の優れた研究活動を行う我が国の大学群の研究力向上に関わる取り組みを実施してきました。また、その取り組みは、本「研究大学コンソーシアム」を通じて、コンソーシアム参画33大学等において共有・協働することで、EBPMの推進やエビデンスの収集・分析、国際広報や産学連携などにおいて大きな波及効果を生み出しています。
今後、経済社会活動の再開を踏まえ、本事業による取り組みを通じて、我が国の研究大学群における「新しい研究スタイル」への移行、それによる研究活動の再開と研究力の向上について、スピード感をもって取り組まなければなりません。その際、各大学等の研究者チームの連携、さらに、産学連携や国際連携を維持し促進を図る上で、その効率的・効果的なマネジメントの中核を期待される研究マネジメント人材であるURAの存在は、欠かすことができません。
新型コロナウイルス感染症災禍からの研究活動の再開と研究力の向上に必要な「新しい研究スタイル」の実現においても、研究マネジメント人材としてのURAの役割は極めて重要です。
具体的には、研究活動の再開と研究力の向上に必要な「新しい研究スタイル」の実現においても、以下の点で、URAによる研究マネジメントの支援が期待できます。
- 研究の企画立案から外部資金獲得、研究成果公開や産学連携・社会還元まで、全体を通じ一気通貫した研究マネジメントの支援
- 災禍からの速やかな研究活動の再開と更なる研究力の向上に向け、国際的な(研究)動向と研究力の分析を通じた、戦略性をもった研究企画立案支援
- 研究のリモート化・スマート化・デジタル化などに伴う、多点・多人数で構成される研究チームの運用マネジメント支援
- 社会課題解決にむけた社会との連携活動支援(産学連携を含む)
- 上記を通じた、研究者が研究に専念できる時間の確保
その一方で、我が国におけるURAは、現在定着を進めている新しい職種であり、雇用形態が任期付の
形態が多く、その雇用経費の多くは、産学連携などの共同研究による間接経費や知的財産等収入などの外部資金に依存しています。我々は、研究大学強化促進事業の終了後を見据え、URAの機能により外部資金の獲得額を高め、その間接経費等をもって雇用経費を確保するというサイクルを構築することで、URA雇用の自主財源化を進めてきました。しかし、
これらの外部資金は、しばらく安定的かつ十分に確保することが困難になることが想定されます。また、各大学等の運営費交付金等基盤的な経費についても、その限りある資源を、学生等への支援や、教育・研究環境のデジタル化・リモート化・スマート化等に更なる投資をしていく必要に迫られています。
我々はこうした経済活動の先行きに対する不安によって、
各大学等が構築を進めるURAによる研究マネジメント体制のとん挫、ポスト・コロナを見据えた研究力向上の取り組みの著しい停滞が起きることを危惧しています。
そのため、研究大学コンソーシアム33大学等は、新型コロナウイルス感染症による災禍からの速やかな研究活動の再開と「新しい研究スタイル」への移行、日本の研究大学群の研究力の向上を図るためにも、
研究大学強化促進事業の予算の確保・拡充による、URAの安定的な雇用財源の確保を強く要望いたします。
要望書 [PDFファイル/140KB]