研究大学コンソーシアムとは

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緊急声明 研究者および研究開発マネジメント人材等の安定的な雇用を目指して

更新日:2024年05月30日更新

研究者および研究開発マネジメント人材等の安定的な雇用を目指して


令和6(2024)年5月30日

研究大学コンソーシアム


 我が国の経済等の復活のためには、政府がかかげる「新しい資本主義」のもと、この長いデフレ・スパイラルを脱し、経済を好循環させることが、産学官民を挙げての喫緊の課題となっています。そうした我が国の経済の好循環を生み出す取り組みは、将来の持続的・安定的な科学技術・イノベーションの発展を支える上で極めて重要であることは間違いありません。

 しかしながら、特に過去20年間にわたって、大学や大学共同利用機関法人等(以下、大学等と呼ぶ)の財務的な体力減衰は目を覆うばかりです。例えば、大学等においては、若年研究者層の任期付き雇用が倍増しています。また、大学等における新たに必要とされる業務・活動が著しく増加しており(注1)、それに伴う経費(高度専門人材の雇用経費等を含む)は、運営費交付金などの基盤的な財源や産学官活動の収益等だけではカバーしきれない額にまで及んでいます。

 そうした中、昨今、デフレからの脱却の副作用として表面化している急激な物価の上昇と円安・ドル高は、将来のイノベーションの源泉となる大学等、研究現場における人件費と物件費の高騰、及び新たな業務を担う高度専門人材の確保等の難しさなどを引き起こしています。これにより、研究活動のみならず、人材育成といった大学等の活動を縮小しなければならない状況になってしまうのであれば、将来の科学技術・イノベーションの芽が、ここで絶たれてしまうことになりかねません。

 もちろん、大学等においては、ガバナンス強化やその財務改革により、自主財源も含めた資金の安定化につとめ、将来の基盤を作っていく不断の努力が必要です。たとえば、大学等においては、現在の物価等を適切に反映した産学官連携に伴う料金改正などの取り組みを、いま以上に推進していく必要があります。

 しかし、昨今の急激な物価上昇は、自己努力だけでは耐えられないほどになっています。また、現状、研究者や研究開発マネジメント人材の雇用の多くが、運営費交付金などの基盤的な財源に依存していることもあり(注2)、昨年度の人事院勧告(注3)に見合う人件費の確保は厳しい状況です(注4)。この窮状では、博士人材を含め、科学技術・イノベーションの将来を担う優秀な人材を失ってしまう危機的な状況にあります。

 国においては、こうした大学等における研究現場の喫緊の課題と窮状をご理解いただくとともに、博士人材を含めた将来の科学技術・イノベーションを担う人材の芽が絶えないよう、産官学民の協力のもと、緊急かつ持続的な対策が必要であることをご認識いただき、相応の予算的配慮等をお願い申し上げます。



注1:文部科学省科学技術・学術審議会人材委員会研究開発イノベーションの創出に関わるマネジメント業務・人材に係るWG(第5回)における文部科学省からの研究開発マネジメント人材等にかかる実態調査報告(2024年4月公表)等によれば、大学等における業務や活動は、ELSI対応や、産学官活動の推進、研究インティグリティマネジメント等、拡大しています。


注2:同じく、上記調査報告によれば、約8割の研究開発マネジメント人材(URA、教員・研究者、事務職員、その他の専門職を含む)が、運営費交付金などの基盤的経費で雇用されています。


注3:2023年8月の令和5年人事院勧告・報告

https://www.jinji.go.jp/seisaku/kankoku/archive/r5/r5_top.html


注4:大学共同利用機関法人である自然科学研究機構の試算では、第5期中期計画(R10(2028)~)開始までの4年間に、研究所一つの運営費にも相当する人件費58億円不足(5%上昇の場合)が予想されています。