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(提言)コロナ禍における留学生や外国人研究者へのビザ発給や入国に関する柔軟な対応を求める提言

更新日:2021年10月18日更新

いつ終わるとも知れぬコロナ禍は、日本経済にも大きな影響を及ぼしているが、大学や研究教育機関における国際的な留学生・研究者受け入れや国際連携研究活動にも、大きな影響を与えている。

もちろん、これ以上のコロナの蔓延を防ぐためにも、海外からの人材流動を抑制する水際対策は、コロナの変異株などの流入を防ぐ意味で、重要であることは間違いない。しかし、現状、企業活動だけでなく、大学や研究機関における国際人材交流や国際共同研究の多くは、見通しすらたっていない状況であり、研究教育現場に大きな影を落とし始めている。国際人材交流や国際共同研究の推進は、日本の大学の研究教育活動において、研究力の強化や国際社会の中でプレゼンスを保つためにもとても重要であるが、これらが大きく停滞しているのである。

本提言は、コロナ対策を徹底しながらも、日本の大学の研究教育活動、研究力強化や国際的プレゼンスをこれ以上妨げないために、研究教育や留学を目的とした留学生へのビザ発給や海外研究者の入国について、自主隔離期間など一定のルールのもと、柔軟な対応をしていただけるようお願いするものである。

​現状の課題

(1)留学生受け入れの停滞

 日本の大学や研究機関に憧れ、海外からやってくる留学生の存在は、日本の国際的なプレゼンスを高めるとともに、大学の研究教育にとって重要な存在である。これは、アメリカ、ヨーロッパ、シンガポールを含む、欧米アジアの研究上位国においても同様であり、コロナ禍以前から、高い学力を有する留学生は世界的な奪い合いとなっている実態があった。そうした激しい競争の中、日本がアメリカなどよりも有利であった点は、地理的な近さ、親しみ、安心・安全な暮らしや、ビザの取りやすさなどであったが、いま、コロナ禍において、このような日本に有利な点がなくなっている。

 特に国費留学生については受け入れにむけたビザ発給など動き始めていると聞いているものの、私費留学生の受入れについて多くの大学で目途がたっていない。特に学位取得目的のため我が国で修学しようとする私費留学生の修学機会を保障することは,国費留学生同様,国際関係上でも重要と考える。

(2)国際共同研究の停滞

国際的な視点で、より優れた研究を推進するためには、国際的な人材交流(主として月単位・年単位の交流)をすすめ、国際共同研究を推進することが重要であることは間違いないが、コロナ禍において、これらが大きく停滞している。オンライン化が進み、世界規模での研究者のオンライン交流はコロナ禍以前よりも随分と活発に行われているものの、研究を前にすすめるための中長期的な人材交流が、コロナ禍においてできていないことが一因である。こうした日本の状況は、短期的な影響だけでなく、長期的な研究力への影響が懸念される。

世界的な状況と懸念

(1) 日本と異なり、G7各国では、学術、産業の観点を鑑み、コロナ禍においてもいち早く、国際的な研究者交流や留学生の確保を再開している。こうした研究者や留学生の国際人材交流が滞っている状況は、G7においては、日本だけであり、このことがきっかけで、ますます優れた研究者や留学生が日本を遠ざけるようになるとも考えられ、このままでは日本の研究教育活動や、研究力、国際的プレゼンスの低下に、より一層拍車がかかる恐れがある。実際、このような状況下で、留学先を日本から他国に変更する留学生も現れるなどしており、留学生の志向の変化が進めば、中長期的な深刻な影響が懸念される

(2) また、日本の入国管理やビザの発給状況と、大学や日本語学校における留学生の受け入れとの連携が殆ど取れていない状況も問題である。実際には講義を受けられないのに、授業料を払っている留学生も多く、各大学はオンラインでできる限りの努力はしているが、状況が殆どシェアされていないため、受け入れ教員個々人と留学生自身の努力にのみ委ねられている。入国できないことに留学生は不満をつのらせており、日本への信頼を損なうことになりかねない。このような状況については、国と大学や研究機関が連携し、組織的に改善することが求められる。

提言:

コロナ対策を徹底しながらも、日本の研究力強化をこれ以上妨げないために、研究や留学を目的とした海外研究者や留学生(国費だけでなく私費留学生を含む)へのビザ発給や入国について、一定のルールのもと、柔軟な対応をしていただけるよう、国に提言するものである。